寄稿「芸文短大での思い出」 名誉教授 松倉 利之
2021.5.24更新
60周年おめでとうございます。私が芸文短大に勤務したのは僅か10年ですが、打楽器奏者(職人)から大学の教員へと大転換した重要な期間でした。指揮・ソルフェージュ・器楽アンサンブルの指導等、専門外の仕事がこれ程有るとは!! 若い頃、指揮者を選り好みしていた自分が如何に生意気だったかを痛感しました。更に、パソコンと睨めっこの事務仕事は私の頭髪にかなりのダメージを与えました。でも、学生達と四六時中顔を合わせる日々がとても濃密で大切な時間だったと感じています。「グランシアタ」での定期演奏会・「音の泉ホール」での各種コンサート・地域貢献としての「巡回演奏」では、教員・学生・演奏員(卒業生)が一体となって本番に向けて準備を進めました。そして打楽器専攻生有志で結成した「ミレニアム」には、部活の顧問の様な感覚で接していました。
在任中に吹奏楽が管弦打コースに新たに導入された事は大きな変化だったと思います。学事歴に毎年記載される催し物以外に、私にとって強烈な印象として残っているのが「パトリア日田」と「エイトピアおおの」での特別演奏会です※1。文化庁の助成を受けた企画で、特設ステージ上に合唱とオーケストラがはみ出んばかりに並んでのコンサートでした。ホールとの打ち合わせ、地元への協力要請等、事務的な仕事の量は半端では有りませんでしたが、それを忘れてしまう程の感動が得られたと思います。日田・大野共に小さな町ですが、ホールの音響は素晴らしく、日田でのワーグナーとヴェルディの合唱付きオーケストラ作品、そして大野での「土の歌」/(佐藤眞)の暖かく雄大な響きが脳裏に焼き付いています。
またそれとは対照的に、九重町の小学校で「ミレニアム」のメンバーと共演した「アウトリーチコンサート」※2も大切な思い出です。最後に、今も学生を指導なさっている音楽科の先生方に精一杯の声援をお送り致します。
大分県立芸術文化短期大学 名誉教授 松倉 利之 (音楽科)
写真:「サントリーホール サマーフェスティバル2020」より
※1
文化庁 地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ 大学を活用した地域芸術文化振興事業
日 時:平成25年(2013) 11月4日(月) 15:00開場/16:00開演
会 場:パトリア日田 大ホールやまびこ
<ワーグナー>
・楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より前奏曲と開幕の合唱
・舞台神聖祝典劇「パルジファル」第1幕より舞台転換の音楽と聖杯の騎士団
<ヴェルディ>
・歌劇「ナブッコ」第3幕より合唱「行け我が想いよ、黄金の翼に乗って」
・歌劇「アイーダ」第2幕より凱旋行進曲
<マーラー>
・交響曲第1番ニ長調「巨人」
●「エイトピアおおの特別演奏会」(&第50回定演)
日 時:平成26年(2014) 10月12日(日) 13:15開場/14時開演
<ハイドン>
・オラトリオ「天地創造」より
<佐藤眞>
・混声合唱のためのカンタータ「土の歌」
<バーンスタイン>
・ウェストサイドストーリーより「シンフォニックダンス」
<ガーシュイン>
・「パリのアメリカ人」
※2
●芸短九重町パーカッションアウトリーチコンサート(ミレニアム)
平成27年(2015) 11月9日(月)・淮園小学校 & 飯田小学校