寄稿「上野丘キャンパスの思い出」 名誉教授 染矢 正一
2021.8.10更新
閑静な小高い丘の佇まいのなかで、スケッチをしている学生の姿が散見され、歌声や楽器の音色が心地よく聞こえてくるキャンパス。
道路沿いには生きた化石と言われる銀杏の大木があり、秋には一面黄色の落ち葉の絨毯ができた。北側では楠の大木が枝を広げ、暑い日には、すずしい木陰を与えてくれた。
キャンパスの南側にはテニスコートがあり、その斜面に降った雨が長い時を経て側溝にきれいな水を湧出し、蛍が生息できた。蛍の光が明滅する学び舎は、多くはあるまい。
新入生の歓迎遠足で、全学で志高湖に行き山菜を摘んだ。糸ヶ浜海浜公園で潮の香を感じながら、バレーボールをしたりした。
放課後、学生と教職員でソフトボールに興じ、恒例の県下の教職員ソフトボール大会に参加した。国際文化学科には、高校のとき3番バッターだったという、東北出身で、大リーグで大活躍の大谷選手を思わせる女性猛者もいた。全学一体の混成チームの打ち上げは、いつも和気あいあいとした集いだった。
仕事として、執筆した本の挿絵を数名の美術科の学生に描いてもらったことがある。個性を感じさせるイラストは、出版社に好評であった。
大学英語教育学会の九州支部大会を本学で行ったとき、懇親会で音楽科の学生に弦楽四重奏を演奏してもらったこともある。学生の技量に、学会参加者はこぞって感嘆の声を上げていた。
授業の終わりに絶えず質問をして、希望の国立大学に進んだり、果敢に試験にチャレンジして、語学を重視する大学へ編入学したりする学生もいた。
本学には、長閑で、自然と調和した雰囲気があった。大分県は緑も海も豊かである。九州で最東端の美しい岬もある。学生には、勉学に加えて、県下の自然も謳歌してほしい。
大分県立芸術文化短期大学 名誉教授 染谷 正一(国際文化学科)