Epistula Vol.75 音楽科の運動神経(2024年6月7日)
Epistula Vol.75(2024年6月7日付)掲載
ロシアの指揮者のゲルギエフは少年時代、優秀なサッカー選手でオリンピックへの道も志したが結局音楽への道を選んだ。
彼のほかにも出会った音楽家にスポーツ経験のある人が多かった。そこで著名なバイオリニストの諏訪内晶子さんに話すと、彼女は即座に「著名な音楽家は皆運動神経が発達していますよ」と言った。「生まれてこの方、音楽と体育というのは対極の感じがしますが」と言うと諏訪内さんは、「特にソリストは皆運動神経が発達しています。演奏に瞬発力が必要だからです」と説明してくれた。
例えば、著名なバイオリニストで昨年本学に来てくれた三浦文彰君を始め、音楽家には楽器を持っていないとスポーツ選手と思わせる人が多い。極めつけは著名なソプラノのネトレプコの相手役を務めるテノールのセルゲイ スコロホードフで、彼の父親はソ連時代10年間ボクシングのチャンピオンの地位を守った人であり、セルゲイの兄も弟もプロボクサーである。来日した際に、後楽園ジムで毎日お湯に浸かりその後はジムで体づくりのトレーニングに励んで発声練習もせず、「声楽家の頂点は40代なのでそれまでは体作り」と言っていた彼のことが思い起こされた。