Epistula Vol.73「続・冷戦終結の思い出」(2023年12月8日)

Epistula Vol.73(2023年12月8日付)掲載

前回のコラム

  チェコ人の親友がチェコからワシントンに帰るとチェコ大使館に呼ばれ、チェコ政府に財政金融の仕組みを説明してほしいと依頼されました。新政府では彼の親友が副首相になっていました。プラハの夕食会で出会った政府の情報担当者は、「6か月前にワシントンに出張した際、君の名前は要注意人物の筆頭だったので会えなかった」と言っていました。講義が終わり「故郷の母に会いたい」とお願いしたら、大統領の車で送ってくれました。

 彼は国に戻って働くべきか悩んでいましたので、私は「絶対帰国して国のために尽くすべきだ。」と助言しました。数年後、WTOの交渉官として私はジュネーブを訪れ、ある朝ホテルの地下1階の朝食会場に降りていくと、エレベーターの前に彼が立っていました。彼の肩書は、「大蔵大臣顧問、経済大臣顧問、中央銀行総裁顧問」で、チェコの交渉団の団長でした。

 数年後に再会すると、彼はチェコ政府の役人を辞め、WTO の職員になっており、チェコ人の女性と
再婚していました。冷戦終了後のチェコ経済の急成長で家賃が暴騰し、役人の給料では生活が難しくなったからです。図らずも、日本で公務員宿舎に公務員を住まわせていた理由が分かることになりました。