図書館だより 第2号(2004.4.1)

目 次

ある本との出会い─読書のすすめ─
  附属図書館長 吉良 国光

文献資料の求め方

図書館が送る新入生のための大分の知的歩き方

新入生への読書案内

私の図書館利用法
   国際文化学科2年
   情報コミュニケーション学科 平成15年度卒業生

試聴室に行こう!~試聴室お勧めのディスク~

職員のつぶやき

本学教員執筆書籍の紹介

ある本との出会い─読書のすすめ─

附属図書館長 吉良 国光

 山登りに熱中して、勉学をほとんど省みることのなかった私ですが、大学3年になると、さすがに卒業論文のこともあり「少しは勉強も…」と思うようになっていました。
 そんな時、大学生協の書籍部でたまたま目にした一冊の本が『中世的世界の形成』(石母田正著、岩波書店発行)という本でした。早速下宿で辞書を片手に読み始めましたが、夏休みが終わる頃、70ページほど読んだところで、投げ出してしまいました。その後、2回目でほぼ読破することができ、3回、4回と必要に迫られて読むうちに、内容の理解も深まり、それにつれて思考の仕方が少しずつ変わっていくのが、自分でもわかりました。
 この本は、東大寺の荘園である伊賀国(三重県)黒田庄を舞台として、古代から中世にかけて、そこに生きる人々の歴史を描いたものですが、単なる学術書としてだけでなく「庄園の歴史は私にとって何よりもまず人間が生き、戦い、かくして歴史を形成してきた一固の世界でなければならなかった」と述べているように、「石母田正」という人間が深く投影された本であり、その真摯な人柄(本でしか石母田正という人を知りませんが)は、奥深く柔軟な思考、ほとんど破綻を来すことがないと思われるほどの緻密な理論等とあいまって、多くの読者を魅了し続けた本です。
 私にとって、この本との偶然の出会いは、非常に大きな意味を持つものであり、その後の私に多大な影響を与えた出来事でした。
 本の読み方、選書の仕方は人それぞれです。これといった決まりはありませんが、自分から求めていかなければ、すばらしい本との出会いも生まれません。是非、無駄をおそれず、大いにいろんな本に挑戦してみてください。そしてそのために、図書館と教員を大いに利用していただきたいと思います。

文献資料の求め方
はじめに

学習・研究を続ける上で必要不可欠なものは雑誌、書籍等の文献資料でしょう。
  皆さんは必要とする情報・知識を求めるとき、どのようにされていますか。手短なところでは、友人知人に聞くとか、インターネットで調べていることでしょう。
  インターネットも手軽ですが、学生として調査・研究の対象資料とするには充分とは言えないでしょう。また、簡単に入手した情報・知識はすぐに忘れてしまいます。
  必要とする情報・知識にたどり着くまでの道程が長い程、それは確実に自分のものになります。
  本学図書館では調査・研究に必要な雑誌・書籍を10万冊余り所蔵し、皆さんの利用に供しています。
  今回は、本学図書館や他の大学図書館等で、あなたが求める情報・知識が掲載された文献資料を所蔵しているか、所蔵している場合、どのような手順でその資料等を入手することが出来るか、その方法についての説明です。

蔵書検索

蔵書検索は、図書館、学内外、自宅等のパソコンでインターネットを利用し、本学図書館のホームページから行えます。
 なお、図書館では、1階に3台、2階に3台、計6台のコンピュータを設置し、利用に供しています。
 では、資料を入手する具体的な手順を説明します。
 図書館のホームページを開き、「蔵書検索」をクリックします。
 *「http://library.oita-pjc.ac.jp/」を入力することでも、蔵書検索の画面が表示されます。

図書館ウェブサイトのトップページ

蔵書検索をクリックすると下記のとおり表示されます。

蔵書検索のページ

書誌検索には(標準)と(詳細)があります。今回は標準検索での説明をします。

あなたが利用しようとしている「書籍名」が正確に分かっている場合

「タイトル」の部分に書籍名を入力し、検索をクリックします。
 なお、句読点や括弧の入力忘れ、ひらがなを漢字で入力する等、本の題名を正確に入力しないと表示されないので間違いのないようにしてください。
 該当の書籍を所蔵していれば、書誌詳細・所蔵一覧の画面が表示され、書籍等についての情報が得られます。
 例として「いま、憲法学を問う」と入力すると、下記の書誌詳細、所蔵一覧が表示されます。
 所蔵一覧には配置場所が第2閲覧室となっているので、西側1階の請求記号323.14/U81の配架位置へ行けば入手することが出来ます。
 この例の場合、状態が貸出中となっているので、カウンターで予約の申込みを行うと、返却され次第、優先して貸出しを受けることが出来ます。

書誌詳細のページ(例)
あなたが利用しようとしている「書籍名等」が正確に分からない場合

本例では、大分県の歴史に登場する人物の情報を得たいが、特定の「書籍名」が正確に分からない場合を紹介します。
 なお、「キーワード」で検索した場合、広範囲の所蔵情報が表示されるので、著者名、出版者名を同時に入力すると、絞り込まれた情報を得ることができます。
 前述、書誌検索の「キーワード」欄に関係のある言葉として「大分県の歴史」と入力してみます。

書誌一覧

書誌一覧では37件が表示されています。
この例では、大分県の歴史上の人物に関わる情報を求めているので、32の大分県歴史人物事典をクリックします。

書誌詳細

書誌詳細、所蔵一覧が表示され、出版者―大分合同新聞社、形態―581頁27cm、配置場所―第3閲覧室(郷土資料コーナー)、請求記号―092.8/O34、状態―空白等の情報が得られます。

あなたが求めている資料が、本学図書館に未だ所蔵されていない場合

所蔵されていない場合、県内の各大学・高等専門学校、大分県立図書館、大分市民図書館に所蔵されているか調べる方法があります。その結果所蔵していれば、大分県立図書館、大分市民図書館については所定の手続きで貸出しを受けることが出来ますし、県内の各大学等で大分県大学図書館協議会に加盟している図書館(図書館利用ガイド8頁参照)であれば、出向き、利用することができます。利用にあたっては「学生証」を持参し、当該図書館の指示に従ってください。
他の図書館が、あなたの求める資料を所蔵しているか調べる方法は、図書館ホームページのトップ画面に戻り、リンク集をクリックします。

図書館ウェブサイトのトップページ

「情報検索ツールとしてのインターネット」の画面が表示されますので、「おおいた」をクリックします。

情報検索ツールとしてのインターネットのページ

おおいたのページ

大分県内の各大学が表示されます。
本例では、大分大学と大分県立図書館が相互協力の一環として「横断検索システム」を構築しているので、その制度を利用した蔵書検索を行ってみます。

大分大学 → 附属施設・センター → 附属図書館 → 資料検索 → 横断検索の順で選択していくと、横断検索システム画面が表示されます。
所定の事項を入力すると、大分大学附属図書館、大分大学附属図書館医学分館、大分県立図書館の3館の蔵書状況を見ることができます。
ここでは、キーワードの入力となっています。例として「大友宗麟」を検索してみます。
検索結果が下記のとおり表示されます。

検索結果(例)

大分大学附属図書館医学分館に3件、大分大学附属図書館に16件、大分県立図書館に151件、大友宗麟に関する資料を所蔵していることが分かります。

更に検索を進めていくことで、求めている資料情報を入手することが出来ます。

おわりに

このように、利用者が求めている資料の検索が、迅速・正確に出来るようになっています。
 本学図書館でも、より詳しい情報を図書館システムに入力する努力をしていますが、まだまだ十分ではありません。求めている資料の検索に行き詰まったら、カウンター係員に相談してください。

図書館が送る新入生のための大分の知的歩き方

新入生の皆さん、入学おめでとう。皆さんはこれから芸短を拠点に、勉強にまた遊びに2年間をすごされることでしょう。このコーナーではそんな皆さんの芸短生活のお手伝いができればと、大分の歴史スポット、文化施設などについて情報を集めてみました。

「春は名のみの…」

大分市近郊の歴史スポット、最初にご紹介するのは臼杵です。映画「なごり雪」の舞台で知られるようになりましたが、臼杵は『早春賦』の作詞者吉丸一昌、文学者野上弥生子の故郷にして、17世紀初頭のキリスト教会設立、スペイン船の寄港など国際色豊かな歴史を持ちます。現在の臼杵市は自然を守り、みそ、しょうゆ、造り酒屋などの醸造業が集まった、静かで歴史が身近に感じられる町といえます。
アクセスは大分駅からJR日豊線、佐伯・宮崎方面行きの電車で35分(特急利用)。おすすめは浜町の野上弥生子記念館とその向かいの久家の大蔵。大蔵外壁のアズレージョが美しいです。そのとなりの小手川商店では臼杵の郷土料理「黄飯」(先のスペイン船寄港時にパエリアが伝わったことが起源という説もあります)をいただくことができます。向かいの古手川酒造で販売されているお酒は、かつて臼杵に建てられたという修練院の絵をラベルに使用しています。近くの二王座歴史の道、サーラ・デ・うすきもおすすめです。有名な石仏は少し離れていて徒歩ではきついかもしれません。

臼杵市HPはこちら:http://www.city.usuki.oita.jp/

「春高楼の…」

大分駅からJR豊肥線(特急利用)あるいは車で1時間ほどの竹田は、岡藩の城下町として栄えた歴史があり、現在でも整然とした町並みは散策にもってこいでしょう。
 国指定史跡でもある岡城址は、現在その石組みだけしか残っていませんが、雄大な景観は一見に値します。少年時代を竹田で過ごした滝廉太郎が、岡城の印象をもとに「荒城の月」を作曲したといわれるのも頷けることです。岡城址は有料ですが(300円)、引き換えに貰える巻物風の案内図はそれ以上の価値がありそう。
 町中には滝廉太郎記念館、廉太郎トンネルと、音楽家滝廉太郎を偲ぶ施設があります。散策に疲れたら岡藩御用達六代目の和菓子屋、但馬屋で一息つきましょう。町中に3店舗ある茶房はいずれも音楽が静かに流れ、落ち着いた雰囲気です。和菓子とお茶のセットで散策の疲れもいやされます。

竹田市HPはこちら:http://www.city.taketa.oita.jp/

「近くへ行きたい」コーナー

芸短の周辺にも歴史文化のスポットがあります。大分探検はここから!
 芸短正門を出て左折し、坂を上り、赤点滅信号をすぎて下ると、交差点にぶつかります。左側のかどが岩屋寺石仏です。さらに道なりにすすみ、神社前を左折、線路を渡ると元町石仏があります。石仏を見たいけど臼杵までは、という方におすすめです。
 芸短正門を出て今度は右折。坂をおりて顕徳の交差点手前を左折すると、割烹佐藤の手前にデウス堂跡記念碑があります。16世紀にキリスト教会が府内に建てられたという故事に由来します。今度は顕徳の交差点を渡り右折し滝尾橋の方に進むと、左側の奥まったところに大友家の菩提寺の万寿寺があります。ここの墓地には滝廉太郎の墓があり、東京音楽学校の同窓生による碑文が刻まれています。ここから国道沿いに大分駅方面に進み、金池交差点を右折して県庁方面に進むと遊歩公園に入ります。ここには大分県出身の彫刻家朝倉文夫の手になる滝廉太郎の像をはじめとして大分にゆかりの記念碑が立ち並んでいます。

大分の情報はここから

大分の情報誌

  • 無料:月刊「ぷらざ」「もぐもぐ」など(各家配布)
  • 有料:「月刊シティ情報おおいた」「conka」
    (コンビニ、書店等で入手可能)

インターネット上の大分情報

大分の施設ガイド

県内の主要大学

文化施設

  • 大分県立総合文化センター(オアシス21) http://www.emo.or.jp/
    コンサートホール(グランシアタ/音の泉ホール)や映像小ホール・県民ギャラリーなどの複合施設。美術科・音楽科でしばしば利用されます。
  • 大分県立図書館 http://library.pref.oita.jp/
  • 大分市コンパルホール
    大分市民図書館や体育館などの複合施設。
  • 大分文化会館

美術館

  • アートプラザ(荷揚3-31/538-5000) 美術展覧会用の小ホールがあります。
  • 大分県立芸術会館(牧緑1-61/552-0077) http://geijutukaikan-b.oita-ed.jp/
    美術科の卒業・修了制作展の会場となります。
  • 大分市美術館(上野865/554-5800) http://www.city.oita.oita.jp/ からリンク
  • 大分文化会館

書店

  • ヴィレッジヴァンガード大分パルコ店(府内1-1-1-7F/540-6626)
    ちょっと変わった品揃えの書店・雑貨屋。
  • 晃星堂書店(中央1-1-17/533-0231)
  • ジュンク堂書店(フォーラス6階)(中央1-2-7-6F/536-8181)
  • 明屋(はるや)書店セントポルタ店(中央2-5-25/532-4343)
  • リブロ大分パルコ店(パルコB1階)(府内1-1-1-B1F/537-0928)
  • リブロ大分わさだ店(トキハわさだ店3階)(玉沢755-1/588-8859)

映画館

  • シネマファイブ(府内2-4-8/536-4512)
  • セントラルプラザ大分(府内3-7-36/537-1115)
  • シネフレックス(わさだタウン)(玉沢755-1/548-7800)
  • T・ジョイ パークプレイス大分(公園通り西2-1/528-7677) http://www.t-joy.net/Oita/

文具店

  • コトブキヤ文具店(中央3-5-8/534-3933)
    美術用画材の品揃えが豊富。
  • 岩尾文具店竹町本店(中央1-4-15/532-9056)
  • デサキデポ・フォーラス大分店(中央1-2-7-8F/540-5600)

CD・レコードショップ

  • リズムレコード(中央1-1-5-1F/536-0387)
  • タワーレコード大分店(フォーラス地下1階)(中央1-2-7-B1F/533-8522)
  • HMVパークプレイス大分(公園通り西2-1/528-7628)
新入生への読書案内

新入生のみなさんへの読書のすすめを執筆していただきました。取り上げられた本は、附属図書館に所蔵もしくは所蔵予定です。

イメージの世界を大切に・・・
河合隼雄『イメージの心理学』(青土社)

一般教育 加藤 千恵子

 無意識の世界について考えたことがありますか。私たちが生きている世界は、科学的で、客観的なことが重要とされる側面を多々持っています。そしてまた、この世界では社会的規範に従って意識的に行動をすることも重要な側面です。しかし、ちょっと立ち止まって考えて下さい。科学的ではなく、かつ私たちが意識しないような世界もあるのではないかと。自分でも気がつかない自分がいるのではないかと。そんな自分が深層心理の世界にいる無意識の自分なのかもしれません。
 この本は、このような世界を、私たち一人一人が持っている無意識のイメージの世界から見つける方法を教えてくれます。そのイメージの世界は、その人が見た夢やその人の作品などと密接な関係があることを、この本が示してくれています。だからといって、この夢を見たから、この作品を作ったから、あなたはこういう人であると、勝手に決めつけるということではありません。夢や作品が生まれた理由を自分なりに考えてみることが、無意識のイメージの世界と共に生きることにつながります。この世界と共に生きることは楽しいだけではありません。つらく葛藤を持つことになるかもしれません。しかし、そのように生きることで、人生が豊かになるということを伝えてくれる本です。
 さらに、この本では、イメージと宗教、イメージと芸術、イメージとライフサイクルなどの関係についても述べられており、イメージがいかに様々な広がりを示しているかがわかります。

(かとう ちえこ/心理学)

小澤征爾『ボクの音楽武者修行』(新潮社)

音楽科 宮本 修

 芸短の正門に入ると出迎えてくれる一本の古木がある。幹の真ん中は枯れて空洞だが堂々と立っている。今年も出会うべき若者のために老体に鞭打ち精一杯の花を咲かせていた。千の手で桜花の枝を振り、「ようこそ芸短へ!熱烈歓迎!」とのエール、聞こえたかなー。
 さて、諸君は「小澤征爾」という名前、知ってるかな? 西洋音楽のメッカ、オペラの殿堂ウィーン国立歌劇場の音楽総監督なんだ。これは大変な事。「日本人にベートーヴェンが解るのか?」「仏教徒なのに『マタイ受難曲』が解るのか?」欧米人の疑問に、小澤氏は「日本人が、どれだけ西洋音楽を究められるか、ボクは、その実験をしている。ほんとうに厳しいが、やるしかない。やってみなければ分からないのだから実験だ。」
 武者修行は45年前、昭和34年2月。23歳の青年は神戸港から貨物船に乗り63日かけてヨーロッパ(マルセイユ)に上陸した。支えは音楽への情熱ただ一つ、お金はナシ。日本の企業から無料で借りた「日の丸付き」スクーター《ラビット号》に跨り、白ヘルメット、ギター背中にあこがれのパリーに向け出発。その年の9月、ブザンソン国際指揮者コンクールに挑戦。初めての他流試合で見事優勝。翌年5月、カラヤン・コンクール(ベルリン)で優勝。7月には生まれて初めてアメリカに乗り込み、タングルウッド音楽祭に参加。特別優秀者賞受賞。翌年2月、25歳の若武者は念願のベルリン・フィルを指揮する。同年4月には米国トップのオーケストラ、ニューヨーク・フィルの副指揮者就任。わずか2年前に、貨物船で渡欧した無名の貧乏青年が天下のニューヨーク・フィルの指揮台に立つだなんて…
 西洋音楽に心奪われ、目覚め、愛し、日本人がクラシック音楽をどこまでやれるのかを問い続けながら、ついにはクラシック界の頂点ともいうべきウィーン国立歌劇場の音楽総監督にまでのぼりつめた日本人指揮者。今日もなお壮大なロマンを追い続けている。まこと、継続は力だ。行き詰まったら、朝に夕に諸君の姿を見守っている桜の老木のあること忘れないこと。木肌にじかに触って話しかけてみること。何か始まるカモ…

(みやもと おさむ/声楽)

Steve Upstill著 Bonnie Sullivan・半明照三監訳
『実践CGへの誘い』共立出版
The RenderMan Companion(原著)

美術科 高橋 信雄

 コンピュータと人間はほぼ30年にわたり、視覚的創作のための新しいツールを作り鍛え上げることに取り組んできたと言えよう。画像化手法の驚くべき発展にともない、コンピュータ・グラフィックスに従事している人たちは、映像表現への要求を拡大してきた。その結果、今日ではリアルな3次元画像生成法を、芸術的表現への本格的かつ豪華な媒体として簡単に利用できるようになった。コンピュータの能力増進により、コンピュータが普通の人にも手に届く機械となり、同時に画像を作り出すソフトウェアの質も向上した。研究室レベルの目新しく、そして贅沢なものとして始まったこの分野は、今では、映像芸術家までが、驚くべき3次元画像を創作するために、成熟した技術をすぐにでも使えるようになった。
 しかしながら、残された問題は、これら映像化技術のすべてを統括して、人々が利用できるようにすることと言える。RenderMan はコンピュータ・グラフィックスに使用するため Pixar 社が設計した強力な3次元画像のレンダリング・インタフェースであり、世界でも一流の合成画像作成技術を広範に提供するものである。
 本書は RenderMan の開発者によつて書かれたそのガイドブックである。最初に、インタフェースで具体化される概念的な構造と用語を詳しく述べることにより、実際のルーチンと標準的な方法がどういう意義を持つかを明らかにする。導入部での各章の広範な論議から徐々に全貌が現れ始め、この本の最後にある専門用語集を見る頃には全体が見えるようになるだろう。

(たかはしのぶお/コンピュータ・グラフィックス)
※高橋先生は平成16年4月名古屋市立大学に転出されました。

見たくない思想的現実を見る

情報コミュニケーション学科 吉良 伸一

 『見たくない思想的現実を見る』(金子勝・大澤真幸共著、岩波書店、2002年)、何とも挑戦的なタイトルではないでしょうか。私は過疎化や高齢化に関心を持っています。この本は見たくない思想的現実に、沖縄・高齢者医療・過疎化・韓国・若者の就職難を取り上げています。経済学者の金子勝さんと社会学者の大澤真幸さんが、「現場」を取材しながら考えた現代の諸相を、雑誌『世界』に連載し、それをまとめたものです。私のテーマは見たくない現実だったのかと、改めて思い知らされたわけです。
 私たちの社会は若者文化と呼ばれます。若さが強調され、老いや病気や死や苦悩はできるだけ思い出さないように、意識の底に追いやられています。高齢化が確実に進行することはわかっていたにもかかわらず、問題はいつも先送りされ続けています。私たちが死すべき限られた存在であることを忘れたがってるのと同じに。おそらく高齢化の問題は先進各国にとって共通で最大の内政問題です。
 過疎化の現実について、糖尿病あるいはボクシングのボディブローのように、ゆっくりと破局が訪れているのでしょうか。ここで考えなければならないことは、高齢化と過疎化はペアになっていることです。過疎化の激しい地域ほど高齢化が進みます。あと数年で我が国は人口減少社会になっていきますが、このことは全国総過疎化時代に入るということです。  最後に若者の就職難について、諸外国ではすでに70年代から問題になっていたことですが、我が国では最近まで表面化しなかった問題です。今後の高齢化にとって最大の危険は若者の就職難だと思います。なんだか暗い話になってしまいました。かつてマルクスは学問の門の前には次のような言葉が掲げてあるといいました。「この門よりはいるものいっさいの希望を捨てよ」です。ダンテの神曲にでてくる地獄の門と同じ言葉です。

(きら しんいち/社会学)

大学に入ってから読むべき本

国際文化学科

 国際文化学科では、各教員からお薦めの本を一冊ずつ挙げていただきました。

杉本良夫『オーストラリア』(岩波新書)

 各種のアンケートで、日本人が「行ってみたい国、住んでみたい国」のトップに挙がるのがオーストラリアです。著者はメルボルンにあるラトループ大学教授で社会学者、もう30年近くオーストラリアで暮らしてきた人です。オーストラリアに関心のある人に、まずお薦めしたいのがこの一冊です。(後藤 一美)

網野善彦『無縁・公界・楽』(平凡社 1978)

 日本における自由と平等を歴史的に追求した書物で、人類における歴史的発展とは何か? を考えさせる本です。(吉良 国光)

J・オースティン『高慢と偏見』(上・下 岩波書店 1994)

 私の読み方は、本学『研究紀要』第41巻に書いてます。二度、三度と読みたくなるかどうかが、ある一つの分かれみちを示すと言われています。(上野 正二)

小林章夫『愛すべきイギリス小説』(丸善ライブラリー 1992)

 『ガリヴァー旅行記』から『ホビットの冒険』まで、18世紀から20世紀までのイギリス小説22作品が取り上げられた解説書です。著者自身の、読んで面白かったという思いが伝わってきて、その作品を思わず読んでみたくなります。(入野 賀和子)

アーネスト・ヘミングウェイ『移動祝祭日』(岩波書店 1990)

 人々の自由さに驚きながら、カフェで原稿を書き、仕事に疲れると友人達とワインを飲み議論していたヘミングウェイの青春時代の自伝です。一人のアメリカ人作家から見たパリの魅力は、私達から見たパリとまさに重なりあいます。(大橋 絵理)

前田英樹『倫理という力』(講談社現代新書 2001)

 とりあえず読んで見て下さい。忘れていたこと、探していたことが見つかる一冊です。(畴谷 憲洋)

本多勝一『カナダ=エスキモー』(朝日文庫 1981)

 異文化を、自分で見聞きした資料によって記述したものがエスノグラフィです。本書は、異文化の学=文化人類学を学ぼうとする人が必ず初めに読まなければならない必読書の一つであり、第一級のエスノグラフィです。(伊藤 泰信)

リルケ『マルテの手記』(岩波文庫など)

 私にとって永遠の書です!(野坂 昭雄)

サンテグジュペリ『星の王子さま』(岩波少年文庫 1953)

 これは子供のためのお話ですが、大人もまた考えさせられる本です。必読書といってよいでしょう。フランス文学の中でも避けて通ることの出来ない書です。(ミュリエル・ミリアン/国際交流員)

宮野智靖ほか『TOEICテスト速攻の英文法』(旺文社 2003)

 就職や進学にTOEIC検定がますます重要視されてきています。本書は大学生を主対象に作られており、TOEICで頻出の内容に絞っていますので、英文法をやり直したい人にも、スコアアップを目指す人にもお薦めです。(竹内 舞子/LL助手)

松久淳・田中渉『天国の本屋』(かまくら春秋社 2000)

 人生に何の目標もない22歳の大学生サトシが、天国の本屋でアルバイトをすることになります。その本屋での出会いや経験がサトシを変えていくというストーリーです。本の苦手な人でもすぐに読めると思います。ぜひ読んでもらいたい1冊です。(森 一十三/平成15年度副手)

私の図書館利用法

 私は図書館という場所が好きで、中学や高校のときも毎日のように通っていました。もともと私が本好きだったことと、冷暖房完備という環境がよかったこともあり、そこで雑誌を読んだり、何か面白そうな本がないか探したりして休み時間をすごしていました。
 大学に入ってレポートなどを書き始めてから、まさに図書館を活用するようになりました。私の場合、レポートの資料集めは図書で先に調べてからインターネットで調べるようにしています。なぜなら、図書は内容が正確だけど最新情報が少なく、インターネットは内容が新しいけれど不確かな情報が多く、この順番で調べれば効率がいいと思うからです。ここの図書館にはインターネットのできるパソコンが5台もあるので、資料集めをするには本当にいい環境です。
 本を読んでいて疲れたときは、試聴室でCDを聞きます。そうやってたまに窓の外を見たりして、頭の疲れをほぐしています。また、ここではビデオやDVDを見ることもできるので、時間ができたら1階の棚から面白そうな映画を探してみるのもいいと思います。
 テスト期間になると人が増えます。そして本が消えます。これはちょっと大げさかもしれません。これは私の体験からいえることですが、ある講義で試験問題が発表されたので、その内容に関する本を借りようと思い本棚のところに行くとその棚の本がほとんどなかったということがありました。私と同じように誰かが試験勉強をするため先に借りてしまったようです。図書館で試験勉強をしようと思ったら、できるだけ早めにとりかかるべきです。
 以上が私の図書館利用法です。最近はほかに用ができて利用回数も減りましたが、2年次の卒業研究などで私の図書館通いは続きそうです。

国際文化学科 2年

 私は図書館の静かな雰囲気が好きで、小学校の頃からよく図書館に通っていました。もちろん、読書も大好きなので、大学の図書館もよく利用しています。
 大学の図書館には指定書のコーナーがあるので便利です。私はレポートを書くときや詳しく知りたいことがあるときに借りて参考にしています。専門的な本もあるので、興味のあるものを借りています。とても勉強になっています。
 またパソコンでの検索も役立っています。読みたい本がどこにあるのかがすぐにわかるし、新着案内ではどんな本が入ってきたのかを見ることができるので便利です。
 さらに私は図書館で本だけでなく新聞も読みます。新聞をとっていないので大切な情報源となっています。
 他に雑誌もあり、バックナンバーは借りることができるので好きなものを借りて家で読むこともあります。
 最近は試聴室も利用するようになりました。私は音楽科ではないので入るのに少し勇気が要りましたが、1回入ると次からは大丈夫でした。CDも借りることができるので、家でゆっくり聴きたいと思ったものを借りています。
 私の図書館利用法を紹介しましたが、他にもいろいろな利用法があると思います。皆さんも自分なりに図書館を活用してみてはいかがでしょうか。

情報コミュニケーション学科 平成15年度卒業生

試聴室に行こう!~試聴室お勧めのディスク~
モーツァルト:交響曲第40番/第38番「プラハ」
ニコラウス・アーノンクール指揮/ヨーロッパ室内管弦楽団

モーツァルト:交響曲第40番/第38番「プラハ」 ニコラウス・アーノンクール指揮/ヨーロッパ室内管弦楽団

1991年12月ウィーン(40番)/1993年6月グラーツ(38番)ライヴ・レコーディング (WPCS-5778:コンパクトディスク)

音楽科 小川 伊作

 今回ご紹介するディスクはモーツァルトの交響曲だ。晩年の3大交響曲のひとつで、これまたポピュラーな作品である。また「交響曲」と聞いただけで、「なにかむずかしそう」と思われる方もいるだろう。しかしこのモーツァルトは違う!バランスのよい響きと、落ち着いたリズム、というのが大方のクラシック、それもモーツァルトのような古典派の音楽の特徴と一般に思われている。逆にいえばわくわくドキドキする要素に欠けている、ともいえるのだ。しかしアーノンクールの指揮するこのディスクを聴くと、モーツァルトがこれほどスリリングで、わくわくドキドキする音楽であったのかと驚かされるに違いない。彼は言う「20世紀も終わりに近い現代、モーツァルトを普通に演奏したとてなんの意味もない。モーツァルトは当時の画期的な現代音楽だったのだ。十八世紀のウィーンの人々に、彼の作品はどれほど衝撃をあたえたことだろう。現代の指揮者はそれと同じ衝撃を現代の聴衆にあたえなくてはならないのである」。
 というわけでこのディスク。ふいに流れ出したように聴こえる交響曲40番第1楽章冒頭。CDなのでそんなことはあるはずないのだが、あの律動的で印象的な主題旋律が豊かな表情をまとって次々現れては消えていく。そして強奏と弱奏、鋭いアクセントとレガートの対比、意表をつく間、管楽器の強奏等々。従来のどの演奏にも増してアーノンクールは、スコアの中の表現可能性を拾い上げ、さながら音による構造物に仕立て上げていくのだ。第4楽章。再びオーケストラが小刻みに走りだす。かつて評論家小林秀雄が「大阪の道頓堀をうろついていたとき突然このト短調シンフォニイの有名なテーマが頭の中で鳴ったのである」と書いたあの楽章である。ちょっとでも立ち止まることを許さぬかのようなアーノンクールの指揮は、しかし後半に入るとあっと驚く仕掛けをする。それは何か?聴いてのお楽しみだ。椅子からずり落ちないようにご注意。というわけでクラシックなのに、古典派なのに、モーツァルトなのにどきどきわくわくする。エレガントと悪魔的、慈愛と攻撃性といった二面性を、モーツァルトの音楽からこれほど明確に導き出した演奏もまれであろう。
 指揮者のニコラウス/アーノンクールは1970年代より古楽(バロック以前の音楽の忠実な再現)の旗手として登場し、以来数々の演奏・録音を通じてセンセーションを巻き起こしてきた。バロックを制覇した後、古典派、ロマン派と新しい時代にも手を染め、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーなども手がけた。モーツァルトは80年代に手がけたのが最初であり、このディスクは2度目の録音となる。
 38番にも少し触れておこう。表題「プラハ」は、この曲の初演地プラハにちなんだ通称。モーツァルトに自作の指揮をするよう招待したプラハは、彼の後半生にとって大事な土地となる。メヌエット抜きの3楽章構成だが、各楽章の規模が大きいため演奏時間は他の交響曲にひけはとらない。曲の解説を書く余裕はないが、第1楽章の序奏が終わった後、弦の刻みにのせて入ってくる主題旋律に注目してほしい。ここで現れた旋律が変形されながらこの楽章を一貫するのだが、なにか胸を張り視線を高くあげるような、そんな凛とした表情がこの主題にはある。
 というわけで新入生の皆さん、そして在学生の皆さん。試聴室に行こう!わくわくするクラシックも、ドキドキするジャズも、懐かしいフォークも皆さんが聴きに来るのを待ってます。

(おがわ いさく/音楽学)

職員のつぶやき

 5年前の赴任当初、学習机の上に消しゴムのカスが多いのに驚いた。自宅でも勉強中に出来たゴミは放置したままなのか、それとも家族が後片付けをするのだろうか。
 以前の職場の上司で、仕事が一段落したとき、手短な書類で机の上を「バンバン」と叩き、叩いた風の勢いで周辺を綺麗にしていたが、それも周りの者にとっては迷惑な事だった。
 しかし、ここ数年は机の上がそれ程汚れていないなとは感じていた。先日館内見回り中、偶然に消しゴムカスを掃き集めている利用者を見かけ、忘れていた「からだの中をそよ風が吹きぬける感じ」という言葉を思い出した。このような利用者が増えてきているのだろうかと、楽しい気分になった。
 古い標語に「来た時よりも美しく」と言うのがあるが、次に利用する方の為にも最小限自分の散らかしたゴミは回収して貰いたいものだ。

(橋本:平成16年3月退職)

 本図書館に勤務し始めて、この3月で満2年となりました。年齢を重ねるにつれ、図書館へ「行く」こと自体数少なくなっていった学生時代。その私が毎日図書館へ通いつめている訳ですが…。ただ一つ、みなさんに申し上げたいことは、情報化社会の進展の中にあって図書館も大きく変わってきていることです。今やインターネットの時代、ホームページを開けば本学はもとより日本中、世界中の図書館蔵書検索ができ、知的好奇心を満たしてくれる無限の学習・研究の世界の入り口となりえます。まずは、是非図書館へ足を運んでみてください。さしあたり借りたい本がない方でも、幅広い情報に触れる中であなたの知的好奇心を満たしてくれる何かと出会うかもしれません。私たちも皆さんの「考える力」を見守りながら、最も身近な存在となる図書館としてサービスの充実に努めたいと思います。わからないことなどがあればお気軽にご相談ください。

(那須)

本学教員執筆書籍の紹介

※2003年10月以降

  • 染矢正一、Fred Ferrasci『First Step to the TOEIC Test Listening』(トーイックテスト リスニング入門)成美堂
  • 染矢正一、Fred Ferrasci『Science for Inquiring Minds』(ビデオで学ぶ暮らしの科学)成美堂
  • Fred Ferrasci『The Basics of News Reading』(よくわかるニュース英語)朝日出版
  • 小川伊作(共著)『音楽小辞典』音楽之友社
  • 畴谷憲洋(共著)『旅の気分でポルトガル語』丸善
  • 伊藤泰信(共著)『太平洋島嶼部住民の移民経験』一橋大学大学院社会学研究科社会人類学研究室
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