第55回卒業式・第37回専攻科修了式を執り行いました

2017.03.28


 第55回卒業式・第37回専攻科修了式を3月23日(木)、本学体育館において執り行いました。
 
 美術科72名、音楽科50名、国際総合学科105名、情報コミュニケーション学科125名の計352名に卒業証書・学位記が授与されました。また、専攻科造形専攻26名、音楽専攻24名の計50名に修了証書・学位記と、対象になる学生に教職免許状(美術科7名、音楽科15名)が授与されました。  

 開式に先立ち、音楽科学生によるオーケストラ演奏が行われました。そしてコーラス隊が加わり「大学賛歌」を一同斉唱して卒業・修了式が始まりました。

 学長式辞で中山欽吾学長より、「『思いやり』、『感謝』、『謙虚』の三つの心を、これからの長い人生で大切な生きる指針として下さい。また『自分の人生は自らの力で切り拓く』心意気を持つことが大切です。さらに『答えの分からない問題に自ら答えを与える』ことができるよう、今後も芸短で過ごした年月を自信の源として、沢山の引き出しを持って希望する道を邁進して下さい。」と学生たちに語りかけました。


 

 卒業生を代表して美術科(美術専攻)の日野もなみさんが「大学では学科を越え、たくさんのことを学ぶことができました。培った経験を生かし、明るく充実した未来を切り開きたいです。それを活かして社会で頑張っていきたいです。」と答辞を述べました。

 最後に「蛍の光」を出席者全員で斉唱し、卒業生・修了生たちは本学を巣立っていきました。

 

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第55回卒業式・第37回専攻科修了式 学長式辞
 

 本日、大分県立芸術文化短期大学を卒業される352名、認定専攻科を修了される50名の皆さん、誠におめでとうございます。

 また、ご多用のなか、大分県教育次長岩武茂代様、大分県企画振興部長廣瀬祐宏様ほか、ご来賓の皆様方にもご臨席いただき、本学役員及び教職員とともに皆さんの門出をお祝いできることは、このうえない喜びであります。ご参列いただきましたご家族、関係者の方々にも、心からお慶び申し上げますとともに、私どもの教育や学生達へのサポートに後援会を通して様々なご支援をいただき、厚く御礼申し上げます。

 本学は創立から56年、認定専攻科は、早くも今回10回目の修了生を送り出すことに なりました。本学の教育は年とともに時代のニーズを捉えた積極的な取組が加わって、特に社会との接点での様々な取組は、学生達の活動ぶりに対して外部からも高い評価を得られるまでになってきました。
 
 各学科においても不断に教育内容の見直しを行っており、時代のニーズにあった教育を行っていくために、新しい教員を採用するにあたっては、専門分野もしなやかに見直して、常に時代にマッチした教育を行なえる体制をとってきました。例えば、人文系学科でのコースの改編や、芸術系学科での吹奏楽教育の導入、デザイン部門の再編・強化などです。
 これにより、卒業後の進路選択が、皆さんの適応力の向上により、社会の要請に的確に応えられるようになってきていることにも繫がっていると思います。

 こうした本学の教育における取組により、皆さんの先輩が社会に出て、様々な場面で活躍し多くの実績を残していることに比例して、地域社会からも「芸短は変わった」という高い評価を得ることに繫がっているのです。また、編入学など進学を目指している皆さんも、先輩達の歩んだ道を、さらに確固たるものにしていってもらいたいと思います。進学先で「芸短から来た学生は凄いぞ」と言われるようになれば、それは後輩達への置き土産にもなるのです。

 皆さんが学生時代を過ごしたこのキャンパスでは、大規模なリニューアル工事が始まり、食堂やショップを併設する新しい音楽ホール棟や、その周辺には本学学生や芸術緑丘高校生、さらに地域住民との交流広場が設けられるなど、魅力あふれるキャンパスづくりが進んでいます。これからどのようにキャンパスが変わって行くのか、ぜひ卒業後も、機会を見つけ母校を訪れてほしいものだと思います。

 ところで、私自身、本学の学長となって八年以上が過ぎました。毎年入学してくる新入生には目線を合わせながら、また卒業する皆さんには、社会の先輩としていろいろなアドバイスをすることで、一日も早く新しい生活の場において、生き生きと枝を広げ、葉をつけて行けるよう祈り続けてきました。そこで、これから卒業される皆さんの人生がより素晴らしいものとなっていくように、先輩として幾つかのアドバイスをさせて頂きます。
 それは私が七十数年の人生を過ごしてきて、常に自分に対しても言い聞かせている「三つの心」という言葉です。 第一の心は、一人の人間として何が大切であるかを考え、人々を思いやる気持ちです。 第二の心は、我々が無事に生きていけるのは、何によって、誰によって支えられているからなのかを知ろうとする心です。そして第三の心は、大自然を人間が征服できるなどと思い上がるなという自らを諫める心です。
 東日本大震災の後、見知らぬ地に避難せざるを得なかった人達に浴びせられる残酷な言葉が報道されています。心ない言葉が震災で住む場所も財産も家族も失った人達にとって、どれだけ残酷なことかに思いを巡らせることができない人達には、「思いやり」、「感謝」、「謙虚」の三つの心と言い換えて、教えてあげたいと思います。
 
 そのうえで、「自分の人生は自らの力で切り拓く」心意気を持つことが大切です。最近の新聞に、かつてオリンピックの体操個人総合で、二度の大会で連続優勝した加藤沢男さんの言葉が載っていました。それは、「人間の動きは力学や生理学では分析できない」ということから練習に取り入れたのが「失敗する練習」だったということです。ぎりぎりの局面で失敗した時の体の感覚を感じとる練習を重ねることで、「プレッシャーに弱かった男」は大舞台が怖くなくなったというのです。それこそが、O脚と猫背という体操選手では大きなハンディとなるものを克服するために体の動きを研究し、人の三倍は練習した結果として、「世界一美しい演技」と賞賛された優勝だった訳です。
 
 そして今ひとつ、多分誰もアドバイスしてくれない重要なことがあります。「答えの分からない問題に自ら答えを与える」ということです。この自分だけの工夫と実践は、他の誰にも分からない、自分だけの秘密の引き出しを持つことになるのです。

 皆さんのこれまでの学生時代は、あらかじめ引かれたレールとその先のゴールが決まっていて、その上を走ってきました。教わったことは知識として身につければいい、と思っておられる方も多いと思います。これまでは、あらかじめ答えのある問題を正しく解くことが試験の成績にも繋がりましたから、そのように考えるのも無理はありません。しかし、これからは「答えの分かっていること」だけではなく、皆さんが日々直面することになる『答えの分からない問題』に立ち向かって、その『正解のない問題』を自らの力で解かなくてはなりません。

 そのためには、私は「頭の中の引き出しを増やせ」と申し上げます。頭の引き出しとは、単なる知識の数ではなく、それが利用できる形に変えられ、整理されていることを言います。つまり答えを引き出すための「自分だけの辞書」であり、「道具」であり、「知恵」なのです。未知の問題に遭遇したときも、この利用できる引き出しを総動員して答えを見つけるのです。

 では、どうしたら引き出しが増やせるのか。実は、知識は左脳で受け入れるのですが、私はこの知識を右脳の感性や直感で耕すことによって、自分の感覚で判断できるようになると思っています。加藤選手が自分の体とその弱点を知ることで、弱点のない人を越えて素晴らしい演技を自分のものにしたのは、まさに自らの左脳と右脳を駆使した結果だと思います。私は今「知識を耕す」といいました。実は文化はカルチャア、そして教養という言葉も英語ではカルチャアとかアーツというのです。カルチャアとは耕すとか栽培するという意味です。そしてアート(アーツ)は芸術という訳の他にも、技術、コツなど人間の持つ広い技能を意味する言葉です。つまり引き出しの中にしまってあるのはこのようなものなのです。

 本学の特色である芸術系と人文系の学科が共存し、お互いに顔が見える中で学問を修めた皆さんには、他の大学にはない、左脳を右脳の力で耕す力、つまり文化を感受する力が備わっているのです。そして、今は自分自身気がついていなくても、周りを巻き込む豊かな感性を皆さん一人ひとりが持っているということに気づく時がきっと来るでしょう。大学で学んだことをもう一度思い起こして、それを「耕して」、「引き出し」にきちんとしまっておきましょう。就職をして社会に出ても、また上級学校に進んでも、このことを忘れずに、いつも「引き出しは増えたかな。」と思い起こしてみて下さい。

 本学での生活は、今思い起こせば、多分アッという間に終わったことでしょうが、よく頑張ったからこそ、今日晴れて「前を見て進もう」という意識が持てるのではないでしょうか。
 
 本学には一度社会に出られて再び学ぶために入学された方もいらっしゃいますが、若い学生にとって良き先輩として頼りにされてきました。そのご努力に深い感謝の意を表したいと思います。皆さん、今後もこの大学で過ごした月日を自信の源として、沢山の引き出しを携えて希望する道を邁進して下さい。その先に必ず道は開け、周囲を幸せにすることができるということを、申し上げたいと思います。

 結びにあたりまして、「卒業おめでとう、そして本学で得た様々な絆を胸に、思い切って未来に向かって飛び立て!貴方にはそれが出来る力があるよ!」という言葉を皆さんに贈り、式辞と致します。


平成29年3月23日
大分県立芸術文化短期大学 学長 中山 欽吾