第54回卒業式・第36回専攻科修了式を執り行いました
2016.03.25
第54回卒業式・第36回専攻科修了式を3月24日(木)、本学体育館において執り行いました。美術科72名、音楽科53名、国際総合学科121名、情報コミュニケーション学科117名の計363名に卒業証書・学位記が授与されました。また、専攻科造形専攻31名、音楽専攻23名の計54名に修了証書・学位記と、対象になる学生に教職免許状(美術科5名、音楽科24名)が授与されました。
学長式辞で中山欽吾学長が「『思いやり』、『感謝』、『謙虚』の三つの心をこれからの長い人生で、大切な生きる指針として下さい。今後も芸短で過ごした年月を自信の源として、沢山の引き出しを持って希望する道を邁進して下さい」と学生たちに語りかけました。
卒業生を代表して音楽科(管弦打コース)の山下優輝さんが「大学での出会いは人生の宝物です。たくさんの知識、経験を積むことができました。社会の一員として将来を切り拓いていきます」と答辞を述べました。
開式に先立ち、音楽科学生によるオーケストラ演奏が行われました。そしてコーラス隊が加わり「大学賛歌」を一同斉唱して卒業・修了式が始まりました。最後は「蛍の光」を出席者全員で斉唱し、“卒業・修了の日”を彩りました。
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第54回卒業式・第36回専攻科修了式 学長式辞
本日、大分県立芸術文化短期大学を卒業される363名、また認定専攻科を修了される54名の皆さん、誠におめでとうございます。ご多用のなかを知事代理として太田副知事様、大分県議会議長様ほか、ご来賓の皆様方にもご臨席いただき、本学役員及び教職員とともに門出をお祝いできることは、私のこのうえない喜びとするところであります。また、ご参列くださいましたご家族、関係者の方々にも、心からお慶び申し上げますとともに、私どもの教育に本学後援会を通して様々なご支援をいただいたことに対しても、厚く御礼申し上げます。
平成28年度は本学創立から55年、認定専攻科開設から9年になりますが、それぞれの学科の教育内容も、着々と充実してきており、そこで学んだ皆さんにとって一段と社会への対応力が上がってきていると実感しています。特に人文系では、ここ数年で国際文化学科が国際総合学科となって、教育内容を卒業後の方向性を見据えた体制を取り、また情報コミュニケーション学科も従来のジャンルを、より具体的な履修の方向を示すことにしたことによって、教育内容の再検討も進んで、本学を目指す学生数が増加しました。皆さんは入学直後からこの体制の中で日々学んできたことになります。こうして自分の専門を意識した皆さんが、就職だけでなくさらに他大学の3年次への編入学にも挑戦ができ、専門知識を伸ばす可能性が広がっています。
一方の芸術系でも、卒業後の方向性を考えて、音楽では吹奏楽の導入を行い、美術では主としてデザイン部門で改革を行い、基礎を学んだ後にビジュアル、メディア、プロダクトといった専門分野を履修する体制にしたことで、教育の可能性が広がりました。さらに認定専攻科では学士号獲得によって、大学院への進学も可能ですので、皆さんの卒業後の選択肢が広がってきたと感じています。すでに修士号を獲得した先輩もいるのです。
私が着任して早いもので7年半になりますが、当時、十分に外部発信できているとは言い難かった本学の大きな可能性に気がつき、「小さくてもキラキラ輝く宝石のような大学になろう」というキャッチフレーズを掲げたことを思い出しますが、それがもう今では、『大分に芸短あり』という評価がすっかり定着し、キャッチフレーズにする必要もないくらい輝きが増しています。その先頭になって頑張ってきた皆さんが、今日この日、本学を後に社会に巣立って行くことになったのです。日頃から数々の機会で見せてくれた皆さんの積極性は、私自身も学長として負けずに頑張らなければ、という気持にさせてくれました。皆さんと共に過ごした日々は長く記憶に留まる楽しい思い出となります。有り難うございました。
さて、この卒業式に当たって、私がほぼ毎年卒業生に語っている「三つの心」について皆さんにも贈りたいと思います。まだ復興への道半ばである東日本大震災を例にとるまでもなく、厳しい環境に置かれている人は沢山います。まず一人の人間として何が大切かを考え、そのような人達を思いやる気持ち、次に我々が無事に生きていけることは、何によって、誰によって支えられているかを知ろうとする心、そして三番目が大自然は人間が征服できるなどと思い上がるなという自らを諫める心です。この3つを、「思いやり」、「感謝」、「謙虚」の三つの心と言い換え、これからの長い人生で、大切な生きる指針として下さい。その上で、これからの自分の人生を自らの力で切り拓くことです。
今ひとつ大切なことがあります。それは『正解のない問題』に答えを与えるということです。これまでの学校時代は、あらかじめ引かれたレールとゴールが決まっていて、その上を走ってきましたし、教わったことは知識として身につければいい、と思っておられる方も多いと思います。あらかじめ答えの与えられている問題を正しく解くことが試験の成績に繋がりましたから、そう考えるのも無理はありません。しかし、実社会ではそう簡単にはいきません。答えの分からない問題で一杯です。
つまり、これからは「答えの分かっていることだけではなく、『正解のない問題』に日々直面することになる」ということです。社会に出ると、お互いに考えの違う沢山の人達がおり、その中で物事を決めて実行していくことが必要になります。そんなとき、自分の意見に相手が納得してくれる自信がありますか? どうすれば納得し賛成してくれますか? マニュアルに書いてある訳ではない、これら沢山の物事を、あなた方はどう答えを出していくのでしょうか。
この、疑問に対して、私は「頭の中の引き出しを増やせ」と申し上げます。頭の引き出しとは、単なる知識の数ではなく、それが利用できる形に変えられて仕舞われていることを言います。つまり答えを引き出すための「自分だけの辞書」であり、「道具」であり、「知恵」なのです。未知の問題に遭遇したときも、この利用できる引き出しを総動員して答えを見つけるのです。
では、どうしたら引き出しが増やせるのか? 実は、皆さんの脳についてヒントがあります。左脳で受け入れた知識を右脳の感性や直感で耕すことによって、自分の感覚で判断できるようになることが「引き出し」だと思っています。皆さんは「カルチャア」とか「アート(アーツ)」いう言葉を知っていますね。この言葉でこの「知識を耕す」という言葉が説明できます。カルチャの語源は『耕す』という意味ですが、教養という言葉もカルチャアとかアーツというのです。そしてアート(アーツ)は芸術、技術、コツなど人間の持つ広い技能も意味する言葉です。つまり引き出しにしまってあるのはこのような「自分で耕した知識」なのです。
本学の特徴である芸術系と人文系の学科があって、お互いに顔が見える中で勉学を修めた皆さんには、他の大学にはない、左脳を右脳の力で耕す力、つまり文化を感受する力が備わっているのです。そして、今は自分自身気がついていなくても、周りを巻き込む豊かな感性を持っているということに気がつくときが来るでしょう。大学でも随分色々な事を学びましたが、それをもう一度思い起こして、耕して、引き出しにきちんとしまっておきましょう。社会に出ても、更に上級学校に進んでも、このことを忘れずに、いつも「引き出しは増えたかな?」と反省してみて下さい。
さて、本学での2年間、もしくは専攻科を含めた4年間は多分アッという間に終わったことでしょうが、よく頑張ったからこそ、今日晴れて「前を見て進もう」という意識が持てるのではないでしょうか。また、本学には一度社会に出られて再び専門知識を取得するために入学された方もいらっしゃいますが、若い学生にとって良き先輩として頼りにされました。そのご努力に深い感謝の意を表したいと思います。今後も芸短で過ごした年月を自信の源として、沢山の引き出しを持って希望する道を邁進して下さい。必ず道は開けるし、周囲を幸せにすることができるということを、申し上げたいと思います。
皆さんに、「おめでとう、そして本学で得た様々な絆を胸に、思い切って未来に向かって飛び立て!貴方にはそれが出来る力があるよ!」という言葉を贈って、式辞と致します。
平成28年3月24日
大分県立芸術文化短期大学 学長 中山 欽吾