卒業・修了学生にインタビューしました(1)音楽科-東京藝術大学に合格-
2015.03.27
今年度卒業、修了した学生の中から、この2年間ないし4年間で優秀な成績を修め、きらりと光る活躍をした方々に学校生活を振り返ってもらいました。芸文短大で経験したことを活かし、新年度への一歩を踏み出す学生たちの軌跡です。1回目の音楽科からは、東京藝術大学音楽学部声楽科に合格した声楽コースの4人を紹介します(1年生も含みます)。
すべては自分自身のスキルアップ
◆藤延一平さん(専攻科2年)/Ten.
東京藝大合格はとにかく嬉しかったです。言葉にできないほどに。2年前は不合格だったので雪辱を果たせました。芸文短大で学んだ4年間はすべて無駄にならないものだなと実感しました。
小学生の頃からアルトホルンやチューバなどに触れて育ってきました。そんな折、高校の音楽の先生から誘われ、オペラ「カルメン」の舞台を観に行きました。そこで初めて声楽に出会いました。生の歌声のインパクトがものすごかったのです。進学校で勉強も忙しかったのですが、声楽と両方に全力で打ち込みました。実に忙しかったです。その時から、すべては自分自身のスキルアップなのだと考えるようになりました。
芸文短大に入ってからは、先生方とは公私ともに親密に。疑問に思ったことはすぐ質問できたので不安はなかったです。先生が受験したときの話なども参考になりました。また、他のコースの学生とも交流しやすい雰囲気だったので、声楽以外の専門の知識を聞くことができました。これは試験にも通じることで、実技は当然ですが、筆記において音楽の各方面への興味・知識が必要となります。先生や学友とたくさん交流し、刺激を受けて勉強できたことは私の財産です。
将来はオペラをやりたいと思っています。大分オペラフェスティバルの「フィガロの結婚」に芸文短大生として協力させてもらったときは、プロを身近に感じました。夢が具体的な形として見えた瞬間でした。これから始まる東京での生活は、初心に戻って多くを吸収していく決意です。
「なぜ」「何のため」の練習なのか考える
◆牧山亮さん(短大2年)/Bas.
芸文短大で1年が過ぎたころ、師事していた先生に「受けてみないか」と言われたことが東京藝術大学を意識したきっかけです。
声楽を始めたのは高校2年の半ばでした。音楽(声楽)の先生のすすめでベートーベンの「第九」に参加した時。一人一人の音を合わせ、作り上げる過程に感動しました。それまでクラシックに触れる機会が少なかったので、猛勉強しました。芸文短大に入ってからも勉強の日々でしたが、とにかく面白かったです。演奏会が多く、やりがいがあります。「なぜ」「何のため」の練習なのか考えながらやるうちに、技術が身に付いていきました。
また、演奏家になるための心構えを幾度となく先生から教わりました。何よりも舞台に立つのは自分なので、平静を保つことを常に意識します。この2年間の演奏会は平静を保つ訓練にもなりました。これまでの一つ一つの積み重ねが東京藝術大合格への道を切りひらいてくれたように思います。
それでも、試験中の2週間はストレスが尋常ではありませんでした。そんな状況を知っている先輩が、気分転換に食事へ連れて行ってくれました。おかげで2次、3次試験でも力を発揮することができました。芸文短大から繋がる人の温かさ、支えをありがたく思います。
将来は宗教音楽の専門家を考えています。音楽に正面から取り組み始めてから3年半がたちます。学ぶにつれてイタリア古典歌曲の素朴な美しさにひかれるようになりました。東京でこれから自分のできることを精一杯していきます。
自分を成長させてくれる声楽
◆佐藤克彦さん(短大2年)Ten.
高校3年になる直前に声楽を始めました。教えて下さった先生の影響です。しかし、幼少のころから続けたピアノも気になったので、入学後しばらくは転科のことで悩みました。担当の先生は親身に接してくれるので正直に打ち明けました。「一つ一つ、目の前にあることに真剣に取り組んでいけ」。先生ははっきりと私に言いました。当然ですよね。声楽を始めて1年ほど、学ぶべきことはたくさんあります。先生のその言葉で突き進んでいく覚悟ができました。
2年前にも東京藝大を受験したのですが、その時は残念な結果に。私は負けず嫌いな性格です。その悔しさを忘れたことは、1日たりともありません。練習で気が緩みそうになったときは「合格するためにはこんなことではだめだ!」と自らを戒めていました。
そして2年が過ぎ、再度挑んだ時に思いました。緊張していない!と。前回は緊張で足がふるえて力が入らなかったという苦い思い出があります。芸文短大で数多くの演奏会に出て、場馴れしたようでした。そして先生から「周りを気にしないで、自分の歌を歌いなさい」と心強いアドバイスを頂き、自分をアピールできました。
東京藝大ではさらに多くのことを学び、ゆくゆくは大学の先生になりたいです。これまで私は多くの先生と関わってきました。基礎をきっちり教えて下さった先生、応用を教えて下さった先生。彼らが私の目標です。自分を成長させてくれる声楽に出会い、進む道がみえたこの2年間に感謝の気持ちでいっぱいです。
音楽を好きな気持ちが大切
◆西田幸里海さん(短大1年)Sop.
子供のころから歌うことが大好きでした。ピアノを習い、合唱団にも所属していました。高校2年の時には声楽で進んでいきたいと思っていたので、音楽の教師をしていた祖母に声楽の先生を紹介してほしいと頼みました。ところが、音楽で生きていくことの厳しさを知る祖母は反対。私は一生懸命説得し、芸文短大の先生のもとへ行くことになりました。
芸文短大入学後は親元から離れたために生活費を稼ぐ必要が出てきました。放課後はバイトへダッシュ。楽しそうに談笑している友人らをうらやましく思うこともありました。私の時間は本当に限られていました。毎日大変でしたが、先生方の指導がわかりやすく、また親身に接してくれるので心の支えになり、頑張ることができました。
タイトな時間で集中して学ぶ中で、さらに上を目指したいと強く思いました。現役時代にも東京藝大を受験しました。2度目とはいえ、試験は精神的・肉体的にきつかったです。他の受験生たちの歌がとても上手に聞こえ、不安でいっぱいに。合格発表も見に行けないほどでした。でも試験では力を発揮できました。1年間の芸文短大での演奏会経験などが私を強くしてくれました。合格を勝ち取る力が身についていました。
東京藝大では大学院に進み、音楽の教師になることが夢です。この数年、一緒に泣き笑い、「風邪をひいていない?大丈夫?」と母親の様に心配してくれた、先生のような指導者になりたいです。音楽を好きな気持ちを忘れずに続けられたのも先生がいてくれたからです。