「フランチェスコ・ミケーリ氏による講演会・オペラマスタークラス」を開催しました
2022.09.30
9月28日(水)、本学音楽ホールで、ドニゼッティ歌劇場財団芸術監督のフランチェスコ・ミケーリ氏による講演会・オペラマスタークラスを開催しました。
マスタークラスでは、音楽科・専攻科音楽専攻声楽コースの学生がマンツーマンのレッスンを受けました。
歌曲の誕生した時代背景を踏まえ、演じる役の社会的立場と人間関係を解説しながら、言葉に合わせた立ち振る舞いやその表現手法など、実演を交えて徹底的に指導していただきました。 学生達は、後半には感情豊かで堂々とした表情に変化していました。また、一流の演出家からのレッスンを受講できたことを大いに喜びました。
「フランチェスコ・ミケーリ 演出家・アートプロデューサーとしての仕事」と題した講演会では、アートマネジメントプログラムを受講する学生を中心に多くの方が訪れました。 オペラの歴史や、ご自身が芸術に携わる仕事を志した経緯、これまで取り組んで来られたことについて音楽や映像を交えて解説し、コロナ禍で芸術分野が苦境に立たされている中、音楽家や芸術に携わる仕事を学ぶ学生に向けてエールを送りました。
http://francescomicheli.com
Instagram @francesco.micheli
フランチェスコ・ミケーリ氏 プロフィール
Francesco Micheli
1972年ベルガモに生まれる。大学の人文学科で学び卒業後、ミラノ市立パオロ・グラッシ芸術学校でディプロマを取得。彼のプロフェッショナルとしてのキャリアは時と共に、二つのレールで展開されるようになる。一つはオペラの分野における革新的な企画に限り引き受ける、国際的に重要なイベントの芸術監督。もう一つはイタリアや外国における演出家としての活動であり、それに教育活動も加わっている。
2012年から2017年まで、マチェラータ・オペラ・フェスティバルの音楽監督を務めた。ミケーリはこの音楽祭にかつての国際的な威信を取り戻すことに成功し、専門家と聴衆の両方からの好評を得て音楽祭は再び世の注目を集めた。
2014年12月からはベルガモのドニゼッティ歌劇場財団の芸術監督。そこでベルガモ出身のこの作曲家の真価を問う徹底的な革命を実現し続けており、彼の生まれた町に、芸術的な構想を実体化するという実績とアイディアをもたらしている。6月の〈ドニゼッティ・ナイト〉と秋の〈ドニゼッティ・オペラ・フェスティバル〉という年2回のフェスティバルの時期をベルガモに作り、オペラ・フェスティバルは2019年に、ドイツの評論家たちが決める“Oper! Award”の、年間最優秀音楽祭に選出された。
2020年には観客が劇場に通うことが不可能になったため、音楽祭の演目をストリーミング配信するためのweb TVを創設し、画期的なフォーマット“ガエターノの家のベルを鳴らそう”では、ディエゴ・パッソーニとクリスティーナ・ブガッティという二人の司会者によるサロンを設け、様々なゲストが訪れてストリーミング中のオペラについてコメントする企画を実現。また、ベルガモ市に捧げるガラ・コンサート“ガエターモ(ガエターノとイタリア語の「愛している」という動詞の組み合わせ)・ベルガモ”などをおこなった。
ミケーリの創造性は、いくつかの劇場との協力関係による一連のプロジェクトにも示される。それらはより幅広い観客がオペラの世界に近づけるために考え出された。その中での好例は、As.Li.Co(若い歌手に歌う場所を与える非営利団体)での初期の活動の後で、レッジョ・エミーリア市で“Opera Off”という企画をスタートさせたこと。スカラ座フィルハーモニーによる、学生の観客向けの“Sound, Music”を企画し、それに加えて“Music Emotion”という映画館でのコンサートの中継をおこなったことなど。普及のための活動としては、テレビ界ではSky ClassicaおよびSky Arteのネットワークで、作者およびプレゼンテーターとしてオペラに関する番組の発案と司会を手がけた。イタリア国営放送第一チャンネルで毎週のコーナーを担当した。
2017年2月からロック歌手のエリオと一緒に、偉大なる作曲家たちを紹介する“オペラ工場”という劇場のフォーマットを考案し、これはリッツォーリ社から出版された『オペラは火薬だ』という本のベースとなった。
2021年にはクルチ社から『フランチェスコ・ミケーリが語る』という、オペラとクラシック音楽の普及のための新しいシリーズの本が出版される。
演出家としてのミケーリは、初期のAs.Li.Coでの活動の後で、イタリア国内や外国の数多くの歌劇場や音楽祭と仕事をしている。それらはしばしばその団体のレパートリー演目として繰り返し上演されている。ヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場、アレーナ・ディ・ヴェローナ、フィレンツェ5月音楽祭劇場、マチェラータのスフェリステーリオ野外劇場、パレルモ・マッシモ歌劇場、ボローニャ歌劇場、そして国際的にはアテネ、ボルドー、北京などで演出をしている。
最近の仕事としては、2019年7月にアメリカのアートスフィア・フェスティバル・オーケストラの、月面着陸50周年記念のイベントに招かれ、アーカンソー州ファイエットビルのウォルトン・アーツ・センターにおける『ザ・ムーン』という公演の作者とナレーターを務めた。2019年11月には修復工事中のベルガモのドニゼッティ劇場を使い、この作曲家の再発見されたオペラ『ニシダの天使』を演出。
2020年にはグラインドボーン音楽祭にヘンデル『アルチーナ』の演出でデビューする予定であったが、この公演はコロナが原因で延期され、2022年春に上演が予定されている。
イタリアの月刊誌《クラシック・ヴォイス》編集部は彼を〈2019年に音楽界で最も注目に値する活動をした10人〉に選んだ。
2021年にはベルガモのドニゼッティ・オペラ・フェスティバルにおいてマイールの『コリントのメデア』を演出。
他にも2020年には、コロナによるパンデミックの状況を受けて、より幅広く多様な聴衆に向けての新しいプラットフォームとしてwebを使い、革新的なプロジェクトを実現した。
中でも、ドニゼッティ・オペラ・フェスティバルの音楽監督である指揮者のリッカルド・フリッツァと数多くの歌手たちも参加して行われた“ソファで楽しむグラン・ガラ”、そして“ミケーリ宅でオペラ”、これはwebのためのフォーマットで、その中でミケーリは自宅からの配信で、日常生活で使う道具を利用しながら、オペラの名作の数々について語った。
どちらのプロジェクトも5万人以上の視聴者を複数のオンラインのプラットフォームにおいて集めた。